「上手く言えないけど……一緒にいると安心できて、でも時々子どもっぽいとこもあって可愛くて、でも色々考えてくれてて優しくて。

いろんな面を知ると、もっと深く知りたくなって、気づいたら好きになってた感じ?」


真面目に答えすぎちゃったかな……。

うわ、恥ずかしいー!


恐る恐る阿部くんを見ると、彼は顔を少し赤くして「やべー超うれしいかも」とつぶやいていた。

良かった、引かれるかと思った。


「そうそう、阿部ちゃん平成の引き出し王だから!」


クサマくんも嬉しそうによく分からない返しをくれた。

それからグラタンを口に入れ、アチッと叫んだ後、水を飲んでゲホゲホ言っていた。


別れ際にクサマくんは、

「ホントいい子と出会えてよかったなー。やべー俺超泣きそう」と言って、再び阿部くんにハグしていた。


やっぱりクニオに似て、ちょっとノリはウザいけど、めちゃくちゃいいヤツそうだ。



それからバスに揺られて15分くらい。


窓の外には、住宅街や、大きなスーパーや飲食のチェーン店が次々と流れていく。

雪は時々うっすらと積もる程度らしく、日陰に少し黒ずんだ雪が見えるだけだった。


「もうすぐ着くよ」

「わ、ちょっと緊張してきた」


実家に遊びに行くって、例えばクニオやユカチンの家など、

普通に友達の家に遊びに行く感覚で、お気楽に考えていた節があった。


よく考えたら、わたし彼女なんだよな。


一応、服装はいつもみたいなカジュアルなものではなく、

おめかし用のロングコートにニット生地のワンピースin白シャツ。

足元は急遽ヨーカドーで買った革っぽいブーツ。


着慣れない格好、

見たことがない町、

初めて会う阿部くんファミリー。


次第に緊張でカッチコッチに体が固まっていく。


阿部くんは、

「そんな気張らなくても大丈夫だよ。だってトシミはおれの自慢の彼女だし」

と言って、わたしの手をぎゅっと握ってくれた。


嬉しさのあまり、緊張はどびゅーと吹っ飛んでしまった。