は、ははは……と乾いた笑いが誰かから発せられ、
それは次第にクラスの中に広がっていく。
顔を赤くしてひそひそ話し出す、地味系の女子たちの様子も見えた。
「……なーんだ、んだらその噂ガゼネタだべな。彼女のトシミちゃんがそう言うなら、それが真実だべ」
「あれでね? 本当は阿部ちゃん人気に嫉妬したヤツが適当に流したんでね?」
「ってか阿部ちゃん童貞って意外!」
「絶対、もう捨ててたと思ったのにー」
男女グループもお互いの顔を見合せながら、次第に別の事実に関心を向け始める。
「えがったー。やっぱ童貞って本当だったんだぁ! ま、阿部ちゃんオラに嘘つくわけねーし!」
クニオも大声でそう言ったため、
そこかよ! という突っ込みともにクラス内に笑いが起きていた。
少しずつ、クラス内の空気がほぐれていくのを感じた。
クニオは表情が固まったままの阿部くんの肩に手を回し、
「同志よ、教室さ入るべ!」と声をかけ、教室内に彼を連れ込んだ。
もしかしたら、クニオもその噂を知っていたのかもしれない。
もちろんユカチンも。
しかし、そこでクニオと仲の良い男子軍団が、
「同志って、おめぇユカチンと付き合って半年経ってっぺや」
「おめぇらまだやってねーの!?」
と、キャッキャと騒ぎ始めた。
あ、やばい!
と思った時はすでに遅し。
クニオの左右のこめかみは、恥ずかしそうに顔を赤くしているユカチンの親指と小指にしっかりと挟まれていた。
それは、見事なアイアンクローだった。あちゃー。

