「ごめ、当たっちゃったー」
飛んできた方向を見ると、阿部くんはえくぼを見せながら笑っていた。
ちょ、可愛いんですけど。
「もー!」
わたしも負けずに雪玉を作る。
手袋を忘れたため、冷たかったけど素手で丸めた。
「えいっ」
しかし、手がかじかんでしまい、投げるタイミングが合わず、
それは彼の右頬の横をかすめて、道の奥へと飛んで行った。
「残念~。って手袋してないの?」
ゆっくりと彼が雪を踏みつぶしながら近づいてきた。
今がチャーンス!
わたしは急いで阿部くんに向かって手を伸ばした。
「うわっ、それだめ!」
軽くジャンプしながら、阿部くんの両手でのブロックをかいくぐるように、マフラーで隠れている首筋に触れた。
左目をつぶり、肩をすくめる彼の姿に、胸がきゅーんとした。
もっと、いじめたくなるような気持ちになった。
しかし、
「もー!」
と言って、頬を赤く染めた阿部くんは、わたしの両腕をぐっと掴み下ろす。
その力は強く、やっぱり男の子なんだなと思った。
そのままこつんと優しい頭突きをくらった。
「いてっ」
ちょっとびっくりした。
うぬぼれかもしれないけど、キスされるかと思った。
雪の中、2人でぜーぜー言いながら、何をしているんだろう。
でも、楽しかった。幸せだった。

