僕の幸せは、星をめぐるように。



「飛んでみたいんだけどねー」


わたしは、ため息とともにそうつぶやいたけど、

すぐ横からトントンとガラスを叩かれる音にかき消された。


ガラス越しに見えたのは、

可愛い服を着た女の子2人組が、キャピキャピと阿部くんに手を振っている姿。


うちの高校の人かな。


阿部くんはガラス越しにその女の子たちに軽く会釈をした。

何となく気まずくて、わたしはカップで顔を隠すようにカフェオレを飲んだ。


時間が経ったこと、かつストレートで飲んでいたこともあり、

ぬるい苦味が口の中に広がった。



外に出ると厚い灰色の雲が静かに流れていた。


雪はわたしの太ももくらいの高さまで積もっていた。


左右には家やマンションが並んではいるけど、

人通りは少なく、ざっくざっくとどこかで雪かきをしている音だけが聞こえてくる。


1年の中でも特に日が短いシーズン。

夕方5時にもなると、すでにあたりは薄暗くなってしまう。


しかし、町中を包む雪が、街灯や建物からの光を反射しているため、

その上に存在しているものの輪郭をはっきりと浮かび上がらせていた。


阿部くんは家まで送ってくれることになった。


遠回りになるしいいよ、と断ろうとしたけど、

おれがそうしたいからいいのと言われ、わたしもまだ一緒にいたかったこともあり、大人しく従うことにした。