僕の幸せは、星をめぐるように。



☆ ★ ☆


「あはは、ただの河原だよ」


目の前では、広い北上川がごうごうと流れている。

わたしの声の響きは、その流れの音に溶け込んでいった。


ここは、

『イギリス海岸』

というこの田舎町にふさわしくない何ともグローバルな名前の場所。


かつてはイギリスの海岸にありそうな泥岩層が見られたことより、あのお方――賢治さんが名付けたそうだ。


おかげで、幼いころの私は、イギリスとは自転車で15分くらいで行けるところだと勘違いをするはめになっていた。


晴れの日が続いて水位が下がらないと、今ではイギリス風海岸風景は現れないらしい。


「そうなんだー。ま、一回来てみたかったんだよね」


そう言って、阿部くんはポケットに手を突っ込みながら、土手を下り、川の方へ近づいていった。

観光客らしき人がぽつり、ぽつりと川岸を歩いている。


わたしも阿部くんの後ろを追って、草むらになっている土手を下った。


一昨日くらいに雨が降ったため、水かさはそこそこにある。


「あはは、ただの河原だね」


そう言って、彼はわたしの方を振り返って笑った。