わぁ、ナナミちゃん、すごいなぁ。
踏切り後、バーぎりぎりで体を背中から腰、脚へと順に反らし、見事な背面跳びを決めていた。
少しダボついたジャージを着ているけど、波のような体のラインが見えて綺麗だった。
「トシミちゃん見た~? あたし高校入ってから記録伸びたんだ~」
「すごいね! 何かセクシーだったぁ!」
「あはは! 何それ~!」
わたしがとっさの一言が面白かったのか、
高い位置で結んでいるポニーテールを揺らしながら、ナナミちゃんは笑った。
そして、先輩たちのもとに戻り、アドバイスをもらったり、助走距離の見直しをしたりしていた。
トラックでは、短距離の選手らしき人たちが、もも上げやウェーブ走を何本かしている。
わたしを無理やり誘ってきた先輩たちが、その輪の中にいた。
そして、わたしが座っているベンチのすぐ目の前では、走り幅跳びの選手たちが、助走練習をしていた。
見たところ、わたしがいた中学よりは、全然みんなのやる気もあるし、体のキレも違う。
部活が強いこの高校ではこれが普通なのかもしれないけど。
でも、全国大会レベルの長距離走チームに比べれば、地区大会突破レベルくらいなのかなぁと思った。
「ねーねー、あの子……」
近くにいる幅跳びチームの1人が、わたしのことを指差していた。
「あ、うちも知ってる。南中で幅跳びめちゃくちゃ強かった子だべ?」
「んだよね。去年、県大会で入賞してたっけよ」
ひそひそと話す声が聞こえてくる。
わたしは思わず、下を向いた。
足元に落ちる雪の粒は、着地した瞬間にふわっと消えた。

