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「あ、トシミちゃんだー!」


走り高跳び用のマットとバーを準備しているナナミちゃんが、わたしに向かって手を振った。


ナナミちゃん……

体育大会で悔しい思いをしてから、部活を真面目にやりだしたって言っていた。


そっか。陸上部だったんだ。


わたしも、グラウンド前のベンチに座り、手を振り返す。


ぱら、ぱら、と小さな雪の粒が舞っている。


この前県内ニュースで初雪の知らせがあったけど、

わたしにとってはこれが今年初だった。


セーラー服の上にギャップのダボダボパーカーをすっぽり着て、マフラーをぐるぐる巻き。

この格好だとスカートは膝上の方が似合う。

もちろん黒タイツ着用で。


陸上部はこの学校のグラウンドを中心に、時々、市営の陸上競技場や体育館でも活動をしているらしい。


いつも通りお家に帰ろうとしたら、

急に先輩たちに拉致られて、陸上部の練習を見学することになり、今に至る。