☆ ★ ☆
「あ、トシミちゃんだー!」
走り高跳び用のマットとバーを準備しているナナミちゃんが、わたしに向かって手を振った。
ナナミちゃん……
体育大会で悔しい思いをしてから、部活を真面目にやりだしたって言っていた。
そっか。陸上部だったんだ。
わたしも、グラウンド前のベンチに座り、手を振り返す。
ぱら、ぱら、と小さな雪の粒が舞っている。
この前県内ニュースで初雪の知らせがあったけど、
わたしにとってはこれが今年初だった。
セーラー服の上にギャップのダボダボパーカーをすっぽり着て、マフラーをぐるぐる巻き。
この格好だとスカートは膝上の方が似合う。
もちろん黒タイツ着用で。
陸上部はこの学校のグラウンドを中心に、時々、市営の陸上競技場や体育館でも活動をしているらしい。
いつも通りお家に帰ろうとしたら、
急に先輩たちに拉致られて、陸上部の練習を見学することになり、今に至る。

