日はすっかり落ち、薄暗い1車線の道路を自転車は進む。
「ごめんね、重くない?」
「一応おれだって男の子ですからねー。これくらい余裕っすよ」
阿部くんは今日少し寝坊してしまい、朝はおばあさんに軽トラで送ってもらったらしい。
打ち上げ会場のカラオケ店までは歩きだと結構な距離があるため、
阿部くんは楽器を部室に置いて、わたしのママチャリを漕いでくれていた。
もちろんわたしは、阿部くんの後ろに座っている。
ユカチンやクニオとの2ケツだったら荷台をまたいで乗っていただろうけど、一応阿部くんなので横向きに乗っておいた。
すぐ目の前には意外と広い、阿部くんの背中。
落ちないよう、肩のあたりに手をかけながら軽くしがみつく。
がたん、と自転車が揺れる度に、この制服の白シャツ越しに彼に抱きつきたくなる衝動にかられた。
って、やっぱりわたしって変態!?
それとも、これが恋ってやつなのでしょうか。むむむ。
大通りだと警察に見つかるかもしれないため、車や人通りが少ない道を選んで進んだ。
「ライブ楽しかったよ。曲も良かったし」
「ホント? ありがとう。銀杏の曲ベース難しくてさー」
まわりに広がる田んぼは、稲が全て刈り取られていて、稲株だけが土の上に整列している。
ぽつりぽつりとしか街灯もないため、アスファルトに映し出されるわたしたちの影は、ぐーんと伸びて、だんだん縮んでいっては、またゆっくりと伸びていった。

