「キミなんていらない」



ふと聞こえてきた声に廊下を歩いていた私は足を止めた。



教室には一人の可愛い女子と、如月くんがいた。


告白してフラれたのだろうか。

女の子は泣いてしまっている。


嗚呼、駄目だよ、如月くん。

そんなに嫌そうな顔しちゃって。



私は、どうすれば良いか分からないまま廊下から、そわそわと様子を見守る。






「そんな…酷いよ。ずっと、好きだったんだよ?」

「だから何?」

か細い女子の声にだって如月くんは容赦なかった。




「キミが勝手に僕の事を好きになっただけだろう?僕には関係ないさ。むしろキミなんかより勝手に他人の気持ちを押し付けられる僕の方が可哀相だね。そもそもフラれる事なんて分かってたんだろう?それとも何?僕がキミを好きだと思ってたの?なんて滑稽な勘違い、有り得ないね。簡単に僕の事を好きにならないでくれる?迷惑だよ。何も知らないくせに知ったようにキミは言うけど、僕はキミなんて知らないし、知りたくもないよ。もう二度と僕の前に現れないで。今すぐ消えて。キミなんていらない」





目の前で言われた少女も、廊下から聞いていた私も唖然とした。



こんなにも酷いフラれ方なんてあっただろうか。





如月くんは口をぽっかり空けて突っ立った女子を残して教室を出た。








「盗み聞きなんて、最低だね」


逃げ遅れてしまって、いつもに増して不機嫌な彼と目が合ってしまった。



「君の告白のフリ方も最低だね」



私が皮肉を言えば彼は鼻で笑った。




「僕は好きでもない子と付き合うほど優しい人間なんかじゃない」



夜みたいな綺麗で澄んだ彼の目が私を真直ぐ見据えていて、何故だか私は、また彼に惹かれてしまった。















“螺旋上の星屑”