哀しみが渦巻いていた。


彼から逃げたくて逃げたくて、こんな結果を認めたくはなくて、これからどうしようなんて事は投げ出して私は屋上へと逃げてきた。


空を仰げば、もうすぐ夕日が沈もうとしていて、その夕日を眺めながら私は思い出していた。










純粋に絵を描く事が好きだった。


幼い頃から絵を描くのが好きで、当たり前のように美術部に入っていた。


その頃は、まだ周りからもそれなりに評価されていたから調子にのっていたのかもしれない。






「武藤はどうして絵を続けるのかい?」



それは部長の言葉だった。




「先生から聞いたよ。美大に進学希望なんだって?どうしてだい?君には悪いけど、そこまで秀でた才能はないだろう?」





嘘ではなく、別に傷付く事はなかった。



「私は別にそれでいいと思っていますから」



自分は自分だ、


そう思った。






「ねぇ、君が今回出したコンクール、優秀賞をもらったのは如月らしいよ。一度みに行ってみなよ」





如月……?



別にみに行ったって私は絵を止めたりはしない。


そう強く思った。



結局、私は美術館まで足を運んでいた。沢山の人が集まって見ていた絵は私と同じタイトルの絵だった。



それでも私なんかとは全然違う。



「嗚呼、これが天才というやつか」




それから私は絵が描けなくなった。



でも別にそれは彼のせいではないと思ってた。



ただ自分が自分の存在が赦せなかった。



自分の夢が赦せなかった。

































“ナミダ色ノウサギ”


(ただ泣き腫らした目だけは紅く)