壁を壊して


チュッ。

振り向いた瞬間、私の唇に感じた温かい感触。

その熱いものは、深く深く押し付けられて、私の口内に侵入してくる。

そこに流れて来たのは、少し唾液の混じった、ソーダーの味。

「んふ…ん…。」

変な声が漏れて、顔がだんだん火照って行く。

状況が飲み込めなくて、ただ分かるのは私の唇に光一の唇が当たっているという事実だけ。

これが世間一般に言う、キスなのだろうか?

これって、確か、恋人同士がするものじゃなかったっけ?

そんな疑問がふつふつと湧いて来て、頭は混乱状態。

「ん…こ、こう…いち…。」

光一の名前を必死に呼ぶと、光一の動きが止まった。

「わり…。」

スッと離れて、光一が謝る。

「はぁ…はぁ…。光一…なんで…?」

「…。」