壁を壊して


君に恋して12年目。

やっと叶った。

やっと、壊せた。

嬉しくて嬉しくて、涙が止まらないよ。

「ーっ。」

「美穂…。」

大好きな人の手が私の頬に触れる。

顎を持ち上げられて、光一と目が合う。

少しずつ、大切にするように近づいてくる光一。

そっと触れた優しいキスは、とても甘い味がした。

怖くて、壊せなかった壁。

それは君も同じだったんだね。

ゆっくり離れて、鼻先が触れる距離。

「…美穂、聞かせろよ。お前の気持ち。」

「…分かってるくせに。」

「聞きたいんだよ。お前の口から。」