好きになっちゃダメなのに。


「遥斗。偶然、だね」

まるで私たちだけが、周りの時間の流れから切り離されていたかのような錯覚に陥っていたけれど、そんな空気を崩したのは、にっこり笑った志賀先輩の優しい声だった。


カタン、と持っていたトレイをテーブルに置いて、志賀先輩はひらひらとこちらに向かって手を振った。

速水くんはと言えば、突然の志賀先輩の登場にさすがの彼も頭がついていかないのか、呆然としたまま何も答えられずにいる。


「友達?」

志賀先輩と一緒にいた女の子もこちらを振り向いて、そして志賀先輩にそう訊ねているのが聞こえた。


「うん、生徒会の後輩と……、えっと」


志賀先輩はお友達さんにそう答えて、しかし途中で困ったように笑う。


わ、私のことをどう説明していいのかわからないんだ!


「あ、すいません!私、速水くんの……えっと」


クラスメイト……、だったのは去年だし。

友達……、ではない気がするし。

な、なんて答えたらいいの!?

私の足りない頭では咄嗟に思いつかなくて、言葉に詰まってしまった。


すると私の動揺を見ていた志賀先輩は、少しの間きょとんとしていたけど、すぐにふわりと笑った。


「ああ。……もしかして、遥斗の彼女?」