「……俺、今までは先輩たちに引っ張ってもらって初めて、ちゃんと生徒会の仕事が出来ていた気がする」

ふいに聞こえてきた速水くんの声に、私は驚いて隣を見る。

速水くんがそんなふうに思っていたのは、少し意外だった。


「陽はもちろん、同じ役職の先輩には本当に迷惑かけたし、なんていうか……、大事に育ててもらったな、って思ってる。だから、自分がしてもらったみたいに俺もできるかと言われると、内心、結構不安で」


後輩を育てる、か。

たしかに、速水くん、そういうの苦手そう。


……でも。

「不安に思っているのなんて、速水くんだけじゃないでしょ」


私だってそうだし……、きっとみんなそうだ。


「あんな立派な先輩たちだったんだもん。プレッシャーを感じるのは仕方ないよ」

今日の挨拶だけを見たって、やっぱりまだ私たちにはあんなふうにはなれないと思った。

どんなに頑張ったって、まだ私たちには追いつけない背中だよ。


だけど、今日から始まったばかりなんだから。

同じように、なんてできなくて当然だ。



「でも、速水くんがそう思うのも分かるよ。……立派だったもんね、先輩たちの挨拶」


生徒会長の挨拶はもちろん、私は色々思い入れがあるからか、志賀先輩の挨拶がいちばん印象に残っている。

多分、速水くんもそうだろう。


「志賀先輩、いなくなっちゃうんだね……」