「速水くんっ!起ーきーてーっ!」
私は自分のなかのドキドキを誤魔化すように、さっきよりも大きい声で彼を呼んだ。
すると。
「う、ん……。晴山、さん?」
かたく閉じられていた速水くんの瞼が持ち上がり、綺麗な黒い瞳が私を映す。
いつもより少し低い声で私の名前を呼んだ速水くんは、どうやらまだ夢うつつのよう。
「んー……」
「あっ、速水くん!起き、……っ!きゃあ!?」
ふいに、手首に微かな痛みが走り、カクンと身体がバランスを崩した。
視界が急にぐらりとぶれる。
……一瞬、何が起きたのか分からなかった。
膝がコンクリートの冷たさに直に触れているのも謎。
さっきまで感じていた風の冷たさを全く感じなくなったのも、なぜなのかすぐには理解できなくて。
だけど。
「~~~っ!?」
さすがの私でも、速水くんに抱き寄せられているのだと気付くまで、そう時間はかからなかった。

