「速水くん」
私は寝ている彼のもとに駆け寄って、名前を呼ぶ。
何度か呼んでみたけれど、どうやら思いのほかしっかりした眠りの中にいるらしく、起きる気配はない。
「もう……」
どうしよう、と思いながらも、改めて近くで見る速水くんの綺麗な顔に思わず見惚れてしまった。
閉じられた目を縁取る長い睫毛に思わず溜息をつきながら、今は眼鏡を外しているんだと気付いた。
視線を辿れば、彼の隣にある鞄の上に、いつもの黒縁眼鏡がちょこんと置いてある。
……本当に綺麗な顔してる。
羨ましいくらい。
少し癖のある柔らかそうな黒髪が、今は夕日の色を受けてオレンジ色に染まっている。
「……速水くん、こんなところで寝てたら風邪ひくよ」
いつまでも見惚れているわけにもいかないので、私は諦めずにもう一度声をかけた。
少しためらってから、彼の肩に触れて、揺すってみる。
すると、さすがの速水くんもかすかに身動ぎをした。
「ん……」
低い声が速水くんの喉から鳴って、訳も分からずドキンと心臓が震える。
えっ、やだ、どうして今、こんなにドキドキしてるの?
今は恋愛感情は置いておいて、純粋に仲間として速水くんに接したいのに!

