好きになっちゃダメなのに。


音楽準備室は私の教室からは結構離れているけど、購買や自動販売機が同じ階にあるから使い勝手は結構良い方だと思う。


「えーっと、オレンジと、コーヒー……」

自販機に辿り着いた私は、カランと小銭を入れて、自分用の紙パックのオレンジジュースと、速水くんのブラックコーヒーのボタンを押す。

飲み物ふたつをかがんで取ってから、お釣りを掴もうとしたら、掴み損ねた100円玉が手から滑り落ちて、床をコロコロと転がっていってしまった。


「わわっ」


慌てて他の釣銭を財布に入れ、転がっていった100円玉を追おうと後ろを振り返った瞬間。


「きゃっ!?」

ドンッ、と勢いよく誰かにぶつかってしまい、私は思わず声を上げていた。


「す、すいません!」

相手が誰かもわからないまま慌てて謝って顔を上げる。


「いや、俺の方こそごめん。大丈夫?」

「えっ、あ、須谷くん……!えと、私は大丈夫だよ。ぶつかっちゃってごめんね」


顔を上げた先にいたのは、申し訳なさそうな表情をした須谷くんだった。

驚いて、落ち着きのない返事をしてしまった。

あー、もう、恥ずかしい!