好きになっちゃダメなのに。


***


「おつかれ」


放課後。


選挙に向けた準備が始まってから、音楽準備室で放課後を過ごすことが当たり前になっていた私は、今日も迷うことなくそこへ向かう。

ガラッ、と少し錆びた音を立ててドアを開ければ、すでに窓際の席に速水くんは座っていた。


いつからかそこが速水くんの定位置になっていて、そしてほとんど毎日、速水くんは私より先に来てそこに座っている。


「……?」

いつもなら遅れて入ってきた私に、「おつかれ」って声を返してくれるのに。

作業中でも手を止め、顔を上げて、私の方を見てくれるのに。


今日は、ぼんやりと窓の外を眺めたまま、速水くんは何の反応も返してくれない。


────どうしたんだろう。

そう思って、私は静かにドアを閉め、彼の前まで歩を進める。


「速水くん!」

「っ!?」

ずいっ、と彼の視線に割り込んでみると、速水くんは本気で驚いたようで、びくっと身体を震わせ、目を瞠って私を見た。

え。
もしかして、私がここに来たこと、気付いてなかった?