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「おつかれ」
放課後。
選挙に向けた準備が始まってから、音楽準備室で放課後を過ごすことが当たり前になっていた私は、今日も迷うことなくそこへ向かう。
ガラッ、と少し錆びた音を立ててドアを開ければ、すでに窓際の席に速水くんは座っていた。
いつからかそこが速水くんの定位置になっていて、そしてほとんど毎日、速水くんは私より先に来てそこに座っている。
「……?」
いつもなら遅れて入ってきた私に、「おつかれ」って声を返してくれるのに。
作業中でも手を止め、顔を上げて、私の方を見てくれるのに。
今日は、ぼんやりと窓の外を眺めたまま、速水くんは何の反応も返してくれない。
────どうしたんだろう。
そう思って、私は静かにドアを閉め、彼の前まで歩を進める。
「速水くん!」
「っ!?」
ずいっ、と彼の視線に割り込んでみると、速水くんは本気で驚いたようで、びくっと身体を震わせ、目を瞠って私を見た。
え。
もしかして、私がここに来たこと、気付いてなかった?

