「絵心ないなんて言ってないじゃん。味がある絵で、私は好きだよ!」
ふふっ、と思わず笑みをこぼしながら言うと、速水くんは不機嫌そうに私を見た。
「……笑ってる人に言われても説得力ない」
「絵がおかしくて笑ってるんじゃないから!じゃあ私、コピー行ってきます!」
ガラッ、と音を立てて音楽室を出る時に、「じゃあなんで笑ってんの」という声が聞こえた気がしたけど、聞こえないふりをして、廊下を歩き出す。
────コピー、ってことは、印刷室だよね。
あ、その前に職員室で先生の許可が必要なんだっけ?
「ふふっ」
右手に持った紙をみると、こちらを見つめる男前なクマと目が合う。
速水くんが描いた、って知らなければ、愛嬌のないキャラクターに見えると思うのに。
どうしてだろう。
さっきの速水くんを思い出すと、このクマが可愛く見えてしょうがない。
「……ヘンなの!」
放っておいたら零れてしまいそうになる笑顔を必死で抑えながら、私は軽い足取りで職員室へと向かったのだった。

