速水くんは私の視線に気が付くと、ふいっと顔を背けてしまった。
「……とにかく。明日からビラ配りに俺たちも参戦しないといけないわけ。ビラの原本はもう作ったから、晴山さんはこれ、とりあえず100枚コピーしてきて」
視線を合わせてくれないまま、速水くんからずいっと渡された紙をみると、達筆な字で名前と抱負、それに……。
「……くまさん?」
ちょこん、と控えめに描かれた動物らしきイラストに、思わず首をかしげた。
お世辞にも上手いとは言えないそのイラストは、耳や身体のかたちから、なんとかクマだと分かる。
なんていうか、妙にリアル。
いっそ崩しちゃえば可愛いクマになりそうなのに、と思ってしまった。
「……悪かったね、絵心なくて。でも去年はみんな、結構イラストも描いてたみたいだったから。俺なりに頑張ってかいたんだけど」
ムスッとした声でそう言った速水くんは相変わらずそっぽを向いたままだけど、耳が赤いのが見えて。
速水くんの思わぬ一面を見たような気がして、なんだか嬉しくなった。

