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「晴山さん」
うとうとしていたら、心地よく耳に響く低めの声で名前を呼ばれた。
ハッとして顔を上げると、呆れたような速水くんが立っていて。
「あっ、速水くん!」
下駄箱の横で膝を抱えて丸くなっていた私は、慌てて立ちあがる。
……どれくらい私、ここにいたんだろう。
待ち始めたときはまだこの場所にも夕日が差し込んで明るかったのに、今はもうすっかり暗くなっていた。
昇降口のガラス越しに見える空は、夜の色。
部活の途中で送ったメールの返信は、1時間後だった。
『生徒会の仕事中』
こんな、絵文字もないそっけない文面。
速水くんらしいなぁ、と思わず少し笑ってしまった。
『あとどれくらいで終わるかな?待っててもいい?』
速水くんのメールにそう返信すると、今度は比較的早く返ってきて。
ただそれだけのことがちょっぴり嬉しく思っている自分がいた。

