「私が気にしたって仕方がないことは分かっているんですけどね」

苦笑してそう言うと、「そんなことないよ!」という思いがけず強い口調の夕衣さんのセリフが返ってきた。

少し驚いて夕衣さんの方を見ると、夕衣さんも、そしてその隣で作業をしていた果歩先輩も、一旦パウンドケーキ作りの手を止めていて、ふたりとばっちり目が合う。

「そんなことない!恋愛はたしかに最後は個人戦だけど、応援してくれる人がいるのといないのじゃ、絶対違うと思うよ」


……夕衣さんにも、そういう経験があるのだろうか。

思わずそう思ってしまうくらいのまっすぐで力のある言葉。

そんな夕衣さんの言葉に果歩先輩も優しく微笑んで、頷いた。


「私も夕衣に賛成。明李ちゃんの友達のことは私は知らないけど、明李ちゃんがそこまで気にかけるくらい応援してるって思っただけで、私もそのお友達の恋、応援したい気持ちになるもの。

明李ちゃんは気付いていないかもしれないけど、きっとその友達も、明李ちゃんの気持ち、心強く思っていると思うよ」


「……そう、ですかね」


「うん。絶対そうだよ」