好きになっちゃダメなのに。


「そこのメガネイケメンくんも、はじめまして。俺、こいつの隣に住んでる、谷岡。よろしくな」


意外なほど人好きのする笑顔を向けられて、戸惑いながらも、「よろしくお願いします」と返した。

すると谷岡さんは「おう」と言って、また笑みを深める。


……これが、ヒナの好きなヤツ。


一度告白して振られているし、陽に他に好きな男がいたところで、今更ショックを受けても仕方がない。

陽に好きな人がいてもいなくても、俺を選んでもらえなければ何の意味もないのだから。


────そう、頭では分かっていたけれど。


俺といるときよりも、よっぽど「女子」な陽を見て、何にも気にせずいられるほど、心が冷めているわけじゃない。

強いわけでも、ない。

なんとかいつも通りの自分でいられるようにと、一度、こっそり深く息を吸う。



「速水くん……」

心配そうな声色で、ポツリと呟かれた晴山さんの声にも、気付くことなんてできなかった。