好きになっちゃダメなのに。


手入れの行き届いた広い庭は、見るだけではなく歩いても楽しめるようになっていて、可愛らしいデザインのベンチやティーテーブルが置かれている。

そんな広い庭に入って少し歩いたところに2人掛けのベンチがあって、確かにそこに人影が見えた。


近づくにつれ、ふたりの会話がはっきりと聞こえてくる。

聞こえてくる声のうち、片方は晴山さんの、少し高めの声。

そしてもうひとりは、どうやら男のもののようだった。

晴山さんの声と、男の低い声が交互に聞こえてくる。


「あの、私、そろそろ戻らないといけないのですが」


耳が捉えたのは、晴山さんの言葉。

困ったような、焦ったような、いつにも増して自信なさげな声。

上手くベンチに座るふたりを隠すように視界を邪魔していた、背の高い、紅い花を咲かせた木の横を抜けると、一気に視界が開けて。


「えっ」

いきなり現れた俺に、ベンチに座った晴山さんが驚いたように声を上げた。