空と彼と私

「麻衣、此処に何しに来た?」


最近聞き慣れたはずの声なのに、聞いたことのないような感情のない冷淡な声。


事実を告げていいものか、彼……征司の顔を見ながら考えていると、

「此処がどういうところか知ってるか?」

と。


慌てて、首を横に振ると盛大なため息をつく。


「来い!」


有無を言わせないように、また手を掴まれ歩き出した。


Clubのあるビルの角を曲がると見たことのあるバイク。


それに跨がった征司は、顎で私に乗れと指示をする。


頷き、跨がる私を確認すると、メットを被せ、急発進、急加速する。


寒いだとか、恐いだとか、紙袋を渡して来ないととか、何一つ言えないまま、気づくと、あの土手にバイクは停止した。


土手に下りていく征司を、懸命に追いかけた。