空と彼と私

煙草を加えたまま、無造作にポケットに手を突っ込み取り出されたタオル。


昨日、私が渡したもの。


昨日と違うのは、黒く変色した血がタオルにシミを作っていること。


フェンスに視線をやったまま、腕だけを私に向けて、無言で差し出されたタオルに、ようやく自分がお弁当で汚れていることに気がついた。


「……あ…りがと」


返事はないけれど、この状況下で差し出されたタオルは、例え、忌まわしい過去のものでも、有り難いものだった。


こんな小さなハンドタオルじゃ、もちろん綺麗にはならないけれど。


煙草をコンクリートに押し付け、フェンスに投げた征司は、申し訳なさそうに私に、目を向けた。


「誰だ?」


その目とは違う、殺気にみちた声に、目を丸くした。