空と彼と私

早口でまくし立てるように何かを懸命に伝えている。


その隙に、逃げ出そうと思えばいくらでも逃げられた。


でも、征司のこと、ちゃんと伝えないと。


それが頭を支配していて、足が張り付いたまま動けない。


そんな私の気持ちを知ってか知らずか、再びドアがゆっくりと開いた。


深くキャップを被りその顔は、伺うことが出来ない。


出来ないけど、その彼が、口許に人差し指を立てて、ゆっくりとドアを閉めて、机の下に潜り込んだ。


よっぽど必死なんだ。


少し視野を広げれば、人が入って来た気配がするのに、全く、こちらを見ない。


院長の電話の相手に、何かをずっと言っている。


だが、それが無駄だったのか、


プチッと電話を切ったあと、


「チキショー!裏切りやがって!」


院長は、切ったばかりの携帯を壁に投げつけた。