空と彼と私

いつもよりもワントーン高めのまりあちゃんは、物おじ一つしていなかった。


「申し訳ありません。今すぐ移動させますので」


この暗がりだ。
私も声を裏声に変えた。
私だと気づかないだろう。


そもそも、面接の日以来会ってもいないし。


院長の横を擦り抜けようとした時、腕を掴まれた。


「これも、社会勉強の一環かね?だとしたら、相当質が悪い」


「え?」


まさかばれている?


「なあ、レミ。いや、高梨麻衣」


掴まれた腕をじわりじわりと締め上げていく院長の顔は楽しそうだったが、反対に私は、痛みと恐怖で顔が歪んだ。


「こっちへ来い!」


近くの部屋に乱暴に押し込まれると、院長は後ろを振り返った。


「あんたは、帰りな。神龍会の若頭の怒りは買いたくねェから。ただし、このこと口外したら俺も容赦はしねぇ」