空と彼と私

怪しい名刺を顎で差しながら言う征司の手には、フォークが握られていて、その相変わらず綺麗な手に見とれていたのに。


たまたま印字部分を汚してはならないとひっくり返しただけで、征司に気をつかったわけじゃないのに。


そこまで言われたことに、逆に驚愕して、手から視線を征司の顔に移した。


「悪ィが用事があって、送って行けねェ。タクシー呼ぶから、乗ってけ!」


少し困ったような顔をした征司に、

「いいよ。電車で帰るし」

と告げた。


「……無理。危ねェ」


龍さんの彼女さんに対面していない今は、まだ龍さん側の護衛がないとか。


なら、大丈夫だと力説しても、自分を恨んでいる奴がどこにいるかわからないし、これ以上巻き込むわけにいかないと征司も譲らない。


渋々、うんと返事をした頃には、すっかりエスプレッソも冷めてしまっていた。