空と彼と私

彼女さんの名前を出した時の、グラスに視線を移した龍さんの顔が、柔らかくて綺麗だった。


その表情から彼女さんを愛しているのが、ひしひしと伝わってくる。


「俺は、行きませんよ」


ヤクザの若頭に、そんなこと言えてしまう征司もすごい。


「ん。ただじゃねェ。ビジネス。今後、お前の手を煩わせることをしねェ」


「は?隠していたのを公にしたくせに、今更、関わらないだと?」


「お前は、もう、足を洗えって言ってんの。女の為に、変われ!」


「それ、あんたにだけは、一番言われたくないッスけど」


「そりゃそうだ」


龍さんは笑わないと聞いていた。


だが、その目を細めて、笑い声をあげている。


夢?幻?


龍さんをあんたと呼ぶ征司もだけど、どこか、現実味がない。


「ビジネスなら条件出してもいいよな?」