空と彼と私

「あ、あの……今日、征司来ないって、北條さんに聞いたのですが」


自分から話し掛けてはいけないと聞いていたけれど、目を背け、たまらず声をかけていた。


「俺が呼び出した」


階下を見たままの龍さんの表情は、よく読み取れないが、言い方は、冷たく背筋が凍り硬直した。


自分から話し掛けてはいけないとは、こういうことなんだ。


「あれは、女の顔も声も聞いちゃいねぇ。ああやって、触られて、性欲だけが高まる。その処理する為に連れていく―――」


最後の方は、背中で聞いていた。


なぜ走り出したかは、わからない。


ただ、気づくと私は、龍さんに何も告げずに、Vipルームのドアをあけて、征司のもとへと一生懸命に走っていた。


その後のVipルームでは、龍さんが、肩を揺らながら、私が征司に近づいて行くのを見届けていたらしい。