「ヤンデレよ!」
なりませんでした。
やっぱり彼女は、僕個人ではなく、ヤンデレという不特定多数が大好きみたいです。
「監禁も縛るも、そこに愛がなきゃ意味がないのよ!ただ自分勝手に欲の捌け口にしたいからって、閉じこめるのと訳が違う!ヤンデレの場合は、相手を守るために監禁し、誰にも連れ去られないよう縛ったりするんだからね!あんたがやっていることとは、ぜんぜん違う!」
「も、紅葉(もみじ)、あ、足どけて、ま、マジで」
「なにかしら、聞こえないわ。はっ、散々俺様S気取ってたのに、なに?これ?へし折りやすくなってんだけど?」
「っっっ!黒タイツなんて卑怯だろうが!」
「あたしがM側とかまだ思っているかしら?」
「ないないないっ」
「そうよ、あたしが見たいのは病みに病んだヤンデレ!嫉妬で壊れて、狂っていくのに、根本的には彼女への愛が消えないヤンデレよ!必死に愛を叫び、遂行し、弱りきりながらでも告白してくれるようなヤンデレこそがいい!つき合ってからの別れるルートは、絶対欠かせないわね!」
「聞いてねえーけど、マジでお前がドエスなのは分かったからぁ!」
果てそうになる寸前、見計らったかのように彼女の足が退けられる。
高等テクニックの寸止めじゃないか。
「あ、あれ?」
「退かしたわ、あんたがあまりにもうるさいから」
「い、いや、その」
「なに?何か言いたいことあるの?言ってみなさい、大声で。自分がどうされて、どうなりたかったか、大声で」
「う、ち、ちくしょうがー!」
同じセリフを吐いたはずなのに、悲哀さがにじみ出ている負け犬の遠吠えが部屋から去っていく。
まったく、と彼女が僕の前に屈んだ。


