うそつきは恋のはじまり




雑誌では見かけたけど、実物を見るのは初めて!

サンタさんの格好している!かわいい!ほしい!帰り買いにこようかな……、って、はっ!ダメダメ!大人になるんだから、ぬいぐるみを買い集めるのはやめる!

……部屋にあるたくさんのぬいぐるみたちは捨てられるわけもなく、窓際に飾ってあるけれど。もちろん、彼方くんから貰ったぬいぐるみも。



『ゲーセンで猫のぬいぐるみ見つけて、彼方が『ケティーちゃん好きなあの人に取ってあげたい』って、下手くそながらも必死に取ってた……』



思い出すのは、その話を聞いた時の彼方くんの恥ずかしそうな顔。

ほら、大好きなケティーちゃんのことを考えれば自然と彼方くんの記憶が出てくる。

その度胸が痛むから、早く捨ててしまいたいのに。



「わっ、かわいー!見て見て、ケティーちゃん!」



その時、隣に立った若いカップルは私と同じようにショーウィンドウの中のぬいぐるみを見る。



「お前、本当これ好きだね」

「うんっ!かわいいなぁ〜、ねぇクリスマスにこの一番大きいの買って!」

「はいはい、覚えてたらな」

「本当ー?ねーねー!約束ー!」



大学生くらいだろうか。若いふたりはそう楽しそうに話して、手をつなぎその場を歩き出す。

私がもし同じくらいの歳だったら、ああして堂々と恋人らしくいられたのかな。女の子の隣を歩く男の子に彼方くんの姿を重ね、その自然な光景に涙が出そうになる。



いつになったら、吹っ切れるかな。忘れられるかな。

いつに、なったら。