「ごめんね、お昼中に。この封筒急ぎで郵便局まで出しに行ってもらえない?」
「分かりました、いってきますね」
先輩から頼まれたのは、会社から徒歩十分ほどの所にある郵便局へのおつかい。
渡された封筒を手に会社を出ると、外は冷たい風がびゅうっと吹き、空気が冬を感じさせる。
何気なしにポケットから取り出して見た携帯には、どうしてもまだはがせずにいるプリクラが貼ってある。金平糖のストラップも、まだ、ついたまま。
……これだけ残しておきながら、忘れるなんて無理だよねぇ。自分の割り切れなさに、思わず苦笑いがこぼれてしまう。
でもどうしても、はがせないし、はずせない。
けど、その携帯には今日も彼からの連絡はない。
あの日さよならを告げてから二日ほど連絡はあったけれど、取らずにいたらそのまま連絡はなくなった。きっと、呆れて話をしたい気持ちもなくなったんだと思う。
私は彼のなかで完全に、過去の思い出になった。
「……はぁ、」
小さな溜息をついてふと横を見ると、通りがかった小さな雑貨屋さんのショーウィンドウには、飾られたケティちゃんのぬいぐるみ。
赤いサンタの服を着た、期間限定のクリスマスバージョンだ。
「わっ……かわいい〜!」
思わずショーウィンドウに引き寄せられるように手をつき、まじまじと眺めてしまう。



