「あっ!まずい!」
画面ヒビが入ったらどうしよう!そう焦って椅子から下り床にしゃがみ込むと、落ちた携帯は画面を下にケース側が上を向いていた。
可愛いケティちゃんの絵柄のケース、そこに貼られたのは一枚のプリクラ。私と彼方くんが、楽しそうに笑っている。
「……、」
忘れる。忘れるしかない。なのに、床にポタリと涙が一粒落ちた。
忘れるなんて無理だよ。
だって、小さなきっかけから始まった少しの時間でも、私にとっては立派な恋だった。
彼方くんといると幸せで、ドキドキして、確かに愛していた。大切な想いだった。そんな簡単に忘れられるなら、そもそも好きになんてなっていない。
……最初から、嘘なんてつかなければよかった。
歳を聞かれたあのとき、『引かれるかもしれない』って思っても、素直に言えばよかった。
そこで例え引かれても、気持ちのままに伝えればよかった。
全部が今更で、自業自得。うそつきな、自分のせい。
だから泣く資格なんてないのに、彼を想うと止まらない涙に、デスクの影でひっそりと声を押し殺して泣いた。



