うそつきは恋のはじまり




「……はぁ……」



今日何度目かわからない深い溜息に、さすがの莉緒も『よほどのことがあったのか』とさとるように、隣の席で頬杖をつく。



「なに、年下くんとなにかあったの?」

「……バレました……」

「あら。ってことは自分で言った、ってわけではなさそうね」

「……昨日元彼と行きあって、バラされました……」



ぼそぼそと答えると、自分の発言にまたヘコむ。



「元彼にバラされるって……よりによって一番最悪なパターンじゃない」

「そうなの……絶対嫌われた、絶対……うわぁぁーんっ!!」

「はいはい、よしよし」



嫌われた、引かれた、事実なのだから仕方ないとはいえ言葉にすれば余計にへこむ。

今にも泣き出しそうな勢いで叫び顔を覆う私に、莉緒な呆れながら頭を撫でた。



「じゃあそれが原因でフラれたってこと?」

「……たぶん。怖くて、逃げてきていらい連絡取ってないから」

「なにそれ!はっきりしないなぁ」

「だって……ぎゃっ!」



『だって』の後に続く私の言い訳を阻むように、その細い指先は私の頬をぎゅっと強めにつねる。



「相手の気持ちなんて聞かなきゃわからないじゃん。そうやって逃げるの、七恵のよくない癖だよ」

「うぅ……」

「好きなら傷つくの覚悟で追いかければいいとも思うけど……まぁ、それが出来ないなら忘れるしかないよね」



向き合うことも、追いかけることも出来ないのなら、諦める忘れるしかない。確かに、そう。

だけど、この心にはまだ彼の笑顔が引っかかったまま、消えない。