うそつきは恋のはじまり




それから、一晩が明けた翌日。

12月の晴れ空の、爽やかな天気。特別忙しくもなくみんながほのぼのと仕事をするなか、私の姿はいつも通り、フロアの端のデスクにあった。



それはどんよりとずっしりとした重い空気を漂わせ、沈むようにデスクに伏せる形で。



「七恵ー、書類でわからない所が……ってどうしたのよ」

「どうもこうも、この通りで……私は最低です……カスです……」

「へ?」



当然全く意味などわからなそうに、莉緒は首を傾げて問うものの、私はどんよりと伏せたまま。

思い出すのは、昨日の彼方くんの驚いた顔。



驚いたよね、引いたよね。よりによって元彼に言われてバレるなんて……。

でも相変わらず逃げてばかりの私は、今朝からバス通勤にすることにした。バスだったら、いつもより時間はかかるけど彼方くんと行き会わないから。

昨日から数回、彼からの着信もきているけれど、出ていない。電話口で、別れを告げられるのが怖い。