「10代の頃から、酒飲んでたでしょ」

「……へ?」



って、そっち?



「やっぱり。じゃなきゃ居酒屋なんて行き慣れてないもんね。でも見た目によらず七恵もそういうことするんだねー」

「あ、あははは……」



納得する彼方くんに、必死に笑顔を作って話を流した。



よ、よかった……ばれていない!

気をつけないと、何気ない会話で歳が出てしまう。これじゃ彼方くんに正直に言う前に、いつか自分でボロ出してばれちゃいそうだよ……。

いっそバラしてラクになりたい……けど、ばれた時のことを思うと、あぁ恐ろしい!



そう苦笑いで歩いていると、不意に目に入るのはひとつの姿。



「あれ……」



道路を挟んだ向かいの通りに歩く、男女。女性の肩を抱き歩く男のほうは、見覚えのある茶髪に少し小柄な背をしている。



あれって、もしかして。

そう、それはあの日別れを告げた元恋人・靖久だった。

その隣にいるのは、背の高い大人びた美女。私と同じくらいか少し下か、それくらいの歳に見える彼女は、黒いコートに青のハイヒールがよく似合う。少しきつめの顔立ちをしていて、冷静そう。



付き合っていた時は、年下のくせして私にはいつも偉そうで余裕のあった彼。そんな彼に見捨てられたくなくて、私も頑張って、だけど結局ふられてしまった。

けれど遠目で見た感じ、彼女にはへらへらとヘコヘコと機嫌を伺うような様子を見せている。