うそつきは恋のはじまり




「いや、あの……肌が、きれいだなーと思ったら、つい……」

「肌?普通じゃない?」

「普通じゃないよ!すごくきれい!モチモチだし!」

「そうかな」



力説すると、彼方くんは私の手をそっととり自分の頬に押し当てる。



「じゃあ、もっと触る?」

「え……!!」



もっと触る?なんて、そんな、しかも一度に肌も手も触れて……!

突然のことに、頬をボッと赤くする私に、いたずらっぽく笑った。



「か、彼方くんってときどきいじわる……」

「うん。七恵にはね」

「それ、喜んでいいこと?」

「もちろん」



本当はいつまでも触っていたいけれど、そういうわけにもいかずその頬からそっと手を離す。

周りの席は、あとからやってきた人たちで徐々に埋まり始めた。



「実はさ、映画にしたのは理由があるんだけど」

「理由?」



そんな中で彼方くんがぼそ、と呟いたことに私は首を傾げた。



「俺、オンチなんだよね。歌も、運動も」

「へ?そうなの?」

「うん。だからカラオケ苦手だし、ボーリングも超ヘタクソ。運動全般苦手」



オンチ……って、すごく意外だなぁ。なんでも卒なくこなしていそうなイメージだっただけに、少し驚いてしまう。

そんな私の反応に、恥ずかしいのか、彼方くんは視線をスクリーンのほうへとそらす。