「なに、なんかあったのか?」

「北見さん、聞いてよ。七恵ったら昨日……」



そして北見さんにもボソボソと説明をすると、いつも割と冷静な北見さんの顔も「は!?」と驚きに変わる。



「はー……18歳相手に、ねぇ」

「ありえないでしょ!?北見さんからも七恵に言ってあげて!」



話を聞き終え、驚きながらも納得する北見さんに、私は気まずくサンドイッチをまた一口かじった。



「けどさ、『引かれたくない』ってことは、川崎はその18歳に気があるってことか?」

「え!?」


き、気がある!?

鋭い指摘に、思わず落としそうになった食べかけのサンドイッチを慌てて両手でおさえる。



「な、ない!ないですよ!偶然2回行き会ってちょっと話しただけで……それだけで惚れるとかないですから!」

「まぁそうか、子供じゃあるまいしな」

「そうそう。私たちもう30だよ?若者と恋してるより、将来のための結婚相手探さないと。完全に行き遅れちゃう」

「うっ……」



『結婚』、その言葉が耳に痛い。



けど莉緒の言っていることは正しい。私だってそう思う。

一目惚れとか、ささいなことで恋に落ちるとか、そんな学生時代のような恋をしている場合じゃない。

現実を見て、結婚や人生を考えなくちゃ。



そう、だよね。また会っちゃったりしないように、帰りの電車の時間ずらそう。

心のなかで決め、デスクの上の自分のスマートフォンを見れば、そこにはケティちゃんのストラップに紛れて金平糖のストラップがついている。



『あげる』



同時に思い出すのは、昨日の彼の明るい笑顔。