うそつきは恋のはじまり




「……ま、ビール飲めば少しは元気出るみたいで安心したけど」

「北見さん……」



少しツンとした言い方ながらも、面倒見のいい人なのだろう。優しさの感じられるその一言に、目の前のジョッキには水滴が伝い、テーブルを濡らす。



「……私って、ダメな彼女ですかねぇ」

「え?」

「いつもいつも、彼方くんのことになるとあれこれ気にして堂々といられないんです」



不意に話し出した私に、彼は黙ってそれを聞く。



「彼方くんを信じてないわけじゃないんです。嘘をつく人じゃないし、彼の言葉はいつも真っ直ぐだし」



いつも、いつも向かい合いきちんと言葉をくれる人。そんな彼方くんのことを信じていないわけじゃないの。

信じてる、想ってる。けど、不安は消えずにいる。



「前に北見さんが『浮いたり沈んだりしてるほうが、恋してるって感じ』って言ってたけど、でもこうして深く沈んでしまった時にどうしていいかがわからないです」



『そっちの方が恋してるって感じだろ』

『悩みの数だけ、相手を想った証拠』



嬉しかった、その言葉。だけど終わりのない悩みにはどうしたらいいい?なにが大切か、すぐにわからなくなってしまう。



「そんな自分が、嫌いです……」



小さく呟くと、「焼き鳥盛り合わせです」と若い店員がテーブルに焼き鳥の乗ったお皿を置いて行った。