うそつきは恋のはじまり




「七恵、顔疲れてるね。大丈夫?」

「いやぁ、さすがに大変だったけど……でも彼方くんの顔見たら疲れなんて吹っ飛んじゃった!」

「そう?じゃあ今日は一晩中顔見てる?」

「え!?」



ひ、一晩中って!?

イタズラに言うその言葉に様々なことを想像し顔をぼっと赤くさせてしまう。そんな私に彼方くんはおかしそうに笑うと、背負っていた小さなボディバッグをがさがさとあさる。



「そんな七恵に、ご褒美」



取り出されたのは、毛の長い白猫……ケティーちゃんのぬいぐるみ。ピンク色の着物を着た、和服バージョンだ。



「わっ……わー!かわいい!これどうしたの!?」

「さっきゲーセンで取ってきた。『新年限定バージョン』って書いてあったから。あげる」

「いいの!?ありがとう!かわいい〜……大事にする!」



かわいらしく笑うケティーちゃんを抱きしめ笑う私を見て、彼方くんも笑う。

彼方くんが私のためにとってくれたぬいぐるみと、彼方くんの笑顔。それだけで本当に疲れなんて吹っ飛んで、幸せで胸がいっぱいになる。



「ま、それも15回やってようやく取れたんだけどなぁ」

「最終的に、ゲーセンで働いてる友達が取りやすくサービスまでしてくれて、な」



聞こえたその声に顔を向けると、彼方くんの後ろではけらけらと笑う彼方くんの友達の金髪くんとメガネくん……永瀬くんと多田くんがいた。

どうやらこのふたりと遊びにいっていたようで、私たちのやりとりを一部始終見ていたらしい。