あ、会ってしまった……会うことはないと思ってたのに、会ってしまったー!!
突然のことに、心臓はバクバクと鳴り出す。
「昨日、帰り大丈夫だった?」
「え?」
「いつも降りる駅より二駅も手前で降りちゃったでしょ?」
ば、バレてたー!!!
だから私が電車を降りようとしたときに、なにか言おうとしていたんだ……あぁ、ますますみっともない!恥ずかしい!
「あれ……でもどうして私の降りる駅知ってるの?」
「ん?俺も同じ駅だから。それに、よくこの時間帯の電車乗ってるでしょ。よく見かけるから覚えてたんだよね」
「そうだったんだ……」
普段帰り道は元彼とメールしたり、ネットでお気に入りの可愛いサイト見たりとしていたせいか、全く気付かなかった……!
驚きながら納得する私を、彼はにこにこと笑顔で見つめる。
それにしても、人懐こい子だなぁ。しかも、見れば見るほどかっこいい。
目の前にある顔をちら、と見上げると、突然彼の手は私の右手を掴んだ。
「えっ!?」
い、いきなり手を取るなんて……大胆!積極的!かわいい顔して肉食系!?
どっどうしよう、そんな、いきなりすぎて心の準備がっ……。
その突然の行動に、一瞬にして頭の中はぐるぐるとまわりだす。けれど一方の彼は至って平然と掴んだ右手を見つめた。
その視線の先にあるのは、ケティちゃんの柄の絆創膏が貼られた、昨日すりむいた傷のあるところ。



