うそつきは恋のはじまり




仕事を終え、いつものように帰りの電車に乗り込んだ夜十九時。



いつもと同じ車両のドア付近の席に座る私は、電車に揺られながら自分の爪をまじまじと眺めた。

ラメが入った甘めのチェリーピンク色に塗られた爪は、数日放置したせいかみっともなくはがれてしまっている。



マニキュア、はげてきちゃった。帰ったら塗り直そうかな。

次は何色にしよう、ライトピンク、スモーキーピンク、あえてショッキングピンク?って、はっ!いい加減にピンクから離れよう!

たまにはベージュとか、紫とか、大人な色……持ってないや。買って行こうかなぁ。



「あ、いた」

「へ?……え!?」



その声に顔を上げると、そこにはこちらを見る昨日の彼……美少年がいた。



え!?な、なんでここに!?

はっと電車の外を見れば、停車駅は『青島大学前』。タイミングよくというか、なんというか……彼も今日はこの時間の電車だったらしい。



「昨日はどうも。ありがとうございました」

「こ、こちらこそ!いきなり失礼しました!」



手すりにつかまりながら、私の前に立ちぺこりと頭をさげる彼に、私は座ったまま深々と頭を下げた。