「んー?どこ?」
「この取引先の住所なんだけど、字が潰れて見えなくてね」
「本当だ、取引先のファイル見てみよっか」
同じ制服を同じように着ているにも関わらず、色気の漂う莉緒がすごくうらやましい。
シャンプーかな、香水かな。いい匂い……。
「ところで七恵、昨日は大丈夫だった?」
「へ?なにか?」
「帰り道。結構酔っ払ってるのにひとりだったじゃない?そこらへんで寝たりしなかった?」
莉緒の問いかけに、「あー……」と思い出す、昨夜のこと。
「大丈夫だった、けど……おじさんを投げて、美少年に引かれた……かな」
「は!?なにそれ!?」
当然、意味が分からないと言った様子の莉緒に私は昨日の電車での一部始終を説明した。
「……ってわけで」
「それはまた……豪快なことしたねぇ。そういえば七恵、子供の頃柔道やってたって言ってたっけ」
「うん。人を背負い投げしたのなんてもう十五年ぶりくらいだけど」
えへへ、と笑いながらファイルをめくると莉緒は一緒にファイルを覗き込みながら笑う。



