「……嘘ついて、ごめんなさい。でも、彼方くんに嫌われたくなかった……」



ごめんね、ごめんなさい。でも、知ってほしい気持ちがある。



「嘘つくのは苦しくて、そんな自分がいやで、だけど彼方くんに嫌われるほうが怖かったの……」

「……嫌いになるわけ、ないのに」

「だってぇ〜……」



子供のように「うわぁぁん」と泣き出す私に、彼方くんは笑って濡れた頬にキスをする。



「好きだよ、七恵。七恵のことが、大好き」

「……私も、彼方くんのことが大好きぃ〜……」

「あはは、すごい顔」



好きだよ。彼方くんのことが、大好き。

離したくない、離さないでいて。もっともっと、強く抱き締めて。

そんな気持ちを感じるように、そっと唇にキスをする。永く、永く、優しいキス。



嘘つきには、さよなら。せめて彼の前では、本当の自分でいられるように。

離れた唇に、何気なくテーブルの上を見た彼方くんの視線は私の携帯に止まる。