うそつきは恋のはじまり




とりあえずふたりきりで話が出来る場所、ということで彼方くんとやってきたのは小さなアパートの二階角部屋。そう、私の家だ。

『205』とプレートに書かれたその一室は1Kの一人暮らしに充分な程度の部屋。



「お邪魔します」

「どうぞ、狭いけど」



キッチンを抜けて部屋に入ると、白とピンクの淡い色合いの部屋が広がっている。

出窓には、ぎっしりと飾られたケティーちゃんのぬいぐるみ。



「ぬいぐるみ、すごい数だね」

「可愛いと思ったら買っちゃうからすぐたまっちゃって。時々親戚の子とかにあげたりもしてるんだけどね」



上着を脱ぐ彼方くんを部屋の真ん中のテーブル前へと座らせ、私は急いで温かなコーヒーをいれる。



ま、まさかこんな趣味全開の部屋に彼方くんを招くことになるなんて……!

もっと綺麗にしておけばよかった!せめてぬいぐるみも少ししまっておくとか……あ!カップもケティーちゃん柄のものしかない!ひどすぎる!

……って、今更隠したり繕っても仕方ない、か。



「……よし、」



小さく息を吸い込み気合を入れると、湯気のたつカップをふたつ持って部屋へと入った。