うそつきは恋のはじまり




「いっ、いてぇな!離せ!ふざけんな!!」

「ふざけてるのはそっちだろ。人の彼女になにちょっかい出してるわけ?」



『彼女』、彼方くんからこぼされた予想もしない一言に、おもわず耳を疑う。



「彼女って……お前分かってんのかよ!?こいつ30だぞ!?お前みてーなガキじゃどう見たってつり合わないだろ!!」

「だから、何?」

「え……?」



『何』って、一体どういう意味?



「つり合うか合わないかは、自分で決める。余計なお世話」



彼方くんは強い口調で言い切ると靖久の腕を振り払い、私の腕を掴みスタスタと歩き出してしまう。



「っ……くそ!なんなんだよ!クソガキ!!」



後ろでは靖久の怒鳴り声がするものの、追いかけてくる様子はない。

そういえば、威勢だけはいいけど臆病だったっけ。なら追いかけてくるはずないか、と納得しながら足は必死に彼方くんへとついていく。



でも、どうして彼方くんが……?



「あれから、毎日待ってた」

「え?」



そんな私の心の中の問いかけを読んだかのようなタイミングで、彼方くんは背中を向けたまま呟いた。