練習時の佐紀は、鬼気迫るものがあった。

まるで明日なんか無いかのように、
練習に打ち込んでいた。

周りから見ると、
一生懸命やっているように見えるが、
キャプテンの矢島だけは、
違和感を感じていた。


佐紀は、ミスが多くなった。

今までの佐紀なら、
考えられないようなミスもあった。

チーム内の、簡単な約束事を、
忘れてしまっている事もあった。


  「ちょっと、何やってんのよっ」


そんな矢島の叱責に、
何の反応も示さない事も、度々あった。

聞こえていないのか、
心、ここに非ずなのか。

他の上級生の中には、
“無視かよ”と思う人もいたが、
矢島は、何か、いつもと違うものを
感じていた。