佐紀の記憶は、病院の電話の所で、
切れていた。
それからの記憶も、混沌としていて、
何か、大変な事が起こったとしか、
わからなかった。
佐紀は、ゆっくりと首を、横に振った。
「まあ、いいわ。
それは、後で聞くことにしましょ。
さあ、ご飯、食べて。
あの様子じゃ、朝から、
何も食べてないんでしょ」
佐紀は、テーブルを見た。
夕食の用意がしてあった。
佐紀はもう、それが食べ物であると、
わかっていた。
しかし、食欲は、無かった。
「今は、欲しくない」
佐紀が小さく言うと、伯母さんは、
「ダメッ! 食べなさい。
無理してでも、食べなさい」
と、強く言った。

